森へ入ると、空気はさらにしっとりしていました
重たいのではなく、密着するような濃い空気。
ひんやりと冷たく、水の中にすっぽり入っているかのようです。
心臓がドキドキしました。この空気に触れた瞬間、森全体が「ん?」とこちらに意識を向けてきて、じっと見られているような気がしたのです。1つではない、沢山の何かがこちらを静かに観察している。

「遠野からきました。お世話になります」と目には見えない誰かに言いたかったけれど
誰もいない巨木の森に向かって言うわけにもいかず
心の中でそっと伝えてみます。
体がブルブルと震え始めました。森の外と内側では体感温度がまるで違う。明らかに寒いのです。完全にこの森に気圧され、体は強ばり、呼吸が浅くなります。

その時内側から「このままではまずいよ」と声が聞こえたような気がしました。
「何がまずい」のでしょう。これは私の憶測になりますが、水のように密着する空気の中、【震え、怯え】と言うのは波紋が広がるように森全体、島全体に伝わるような気がしました。
「すみません、急にお邪魔して。お世話になります。どうぞよろしくお願いします。(無事に遠野に帰りたいです)」
全力で頭の中で唱えても、心はブルブル震えています。
「こいつビビってんな、」の他に何も伝わらないような気がしました。
落ち着かなければ、始まらないぞ



ふーっとため息をつくように肺の奥から息を吐き出して
思いっきり息を吸い込み
少し止めて、またふーっとため息をつくように吐く
ヨガでよくやる呼吸です。
何度かくりかえてしているうちに、風が通り抜け森の匂いがスーッと感じられるようになりました
震えている時は分からなかった
そよそよと木をゆらす、心地よい風
風が運んでくる、水辺の匂い、土の匂い、遠くの方で鳥の鳴く声が聞こえます
バサバサっと音がしたのでふと上を見上げたらカラスが2羽こちらを覗き込むように木にとまっていました。木々の隙間からキラキラと光が差し込みその僅かな光が森全体を覆うような苔を薄く照らしています。濃い空気はとても澄んでいて、深呼吸するのが心地よい
いつの間にか震えはおさまり、手足に血が通い初めじんわりと温かく、呼吸が楽になっていました。圧倒的だった森の姿が、少し優しく見えるような気がしました
「ビビったままでは、この風の心地よさに気がつけなかったな」ヨガしててよかったと心底思ったのでした。




「ふう、やれやれ」
巨木の森をテクテク歩きます。
遠野から少しですがお土産を持って来ました。この森、この土地にもどうやら妖怪がいるようです。英語では「super naturalbeeing」と言うのだそうです。(こちらうろ覚えです。違ったらごめんなさい)
妖怪たちの挨拶まわりもきっと上手くやってるでしょう。
ハイダグワイは日本と植生が似ています。見たことのある木や植物をちょこちょこ発見しましたが
雰囲気が少し違うようです
土地によって同じものも少し変わる。きっと人間も土地が変われば少し変わったりするのだと思います。
生まれ育ったわけではないので完璧に真似するのは難しい。けれどその土地の人と挨拶をするためにいくつか言語を覚えるのと同じように、呼吸を合わせることも大事なのかなと感じています。

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